【連載コラム☆最終回】早川光の「お楽しみは、来月!!」5月に食べたい寿司だね(後編)

連載第24回 5月に食べたい寿司だね(後編)

江戸前寿司には、その月に旬のピークを迎えるもの、あるいは漁期などの理由でその月にしか食べられないものなど、期間限定の寿司だねがあります。

述べ3.000軒の寿司を食べてきた早川光が、来月にどうしても食べたい、とっておきの寿司だねBest1&2を紹介します。

・第2位 アオリイカ

 

第2位はアオリイカ。江戸前寿司では晩秋から春はスミイカ、初夏から秋にかけてはアオリイカを握るというのがひとつの伝統でした。それが10年くらい前からシロイカ(ケンサキイカ)を使う店が増え、アオリイカは脇役になりつつあります。

確かにシロイカはアオリイカより歯切れがよくシャリに馴染みやすい。でも味についてはアオリイカの方が上です。アオリイカはグリシン、アラニン、プロリンといった遊離アミノ酸が食用のイカの中で最も多いとされ、甘みが抜きん出て強いからです。独特のもっちりねっとりとした食感も好きな人にはたまりません。

産地としては福井県若狭湾、三重県尾鷲、神奈川県佐島、千葉県富津のあたりですが、産卵期が長いため場所によって旬が異なり、太平洋側では初夏から夏、日本海側では秋とされることが多いようです。東京の寿司屋で食べるのであれば、初夏に三浦半島で獲れるものが一番ではないかと思います。

ただし新鮮なアオリイカはそのままでは固いので、包丁の入れ方に技術が必要です。寿司職人の中にはイカの繊維を断つ包丁に加えて、斜め方向にも包丁を入れたりして、歯切れがよくなるように工夫している人もいます。

そしてアオリイカは醤油より塩が合う。特に海藻から作られた“藻塩”とは相性がよく、甘みがぐっと引き立ちます。だから煮切りではなく塩をつけた握りを食べると、噛むほどに甘みが舌に伝わり、うっとりした気分になります。

 

 

・第1位 タチウオ

 

 

第1位はタチウオ。僕の大好きな魚です。塩焼き、揚げ物、蒸し物、煮つけとどんな料理にしても旨い。まさに万能選手。ただ刺身より火を入れた方が美味しいというイメージが強いので、残念ながら握りに使われることはほとんどありません。寿司屋でもだいたいおつまみとして出てきます。でも僕はタチウオの脂はシャリに合うと思うんですよね。

産地として知られているのは愛媛、大分、長崎、熊本、和歌山。中には熊本県田浦の“田浦銀太刀”や和歌山県箕島の“紀州紀ノ太刀”といった、ブランドタチウオもあります。

それでも食べた中で断トツだと思うのは千葉県竹岡産。これはもう別格です。他の産地のタチウオは1.5キロを超えると大味になったりするのですが、竹岡は逆。2キロ超の太ったものが旨い。太ったといっても背中も盛り上がっていて筋肉質。よほど食べているものがいいんでしょうね。だから脂の甘みも身の旨みも兼ね備えていて、めちゃめちゃ味が濃い。タチウオの旬は冬という人もいますが、竹岡では海水温が上がって活発になる初夏に上質なものが揚がることが多いように思います。

タチウオは皮と身の間の部分が特に旨い。だから握りも皮つきで食べるべきです。皮目を炭火で炙ったものならさらに旨い。パリッとした皮の下から甘い脂が溢れ出て、シャリと混ざり合った時の美味しさはどんな魚にも負けない。飲み込んだ後の残り香まで美味しい。

凄い魚だなあとつくづく思います。

 

【終わり】

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