【大好評☆連載コラム】早川光の「お楽しみは、来月!!」3月に食べたい寿司だね(後編)

連載第20回 3月に食べたい寿司だね

江戸前寿司には、その月に旬のピークを迎えるもの、あるいは漁期などの理由でその月にしか食べられないものなど、期間限定の寿司だねがあります。

述べ3.000軒の寿司を食べてきた早川光が、来月にどうしても食べたい、とっておきの寿司だねBest1&2を紹介します。

 

・第2位 サクラマス

 

第2位はサクラマス。サケ目サケ科の魚で本マスとも呼ばれます。

河川の渓流域で生まれ、海に下り回遊しながら成長し、再び産卵のため河川を遡上します。サクラマスの名前は遡上が桜の開花の頃と重なるからとも、産卵前に魚体が美しい桜色に変わるからとも言われています。この遡上に備えて身に栄養を貯えた初春がサクラマスの旬。北海道では4月、本州では3月頃に旨くなります。

北海道や東北地方ではよく知られた魚ですが、東京や西日本ではあまり馴染みがなく、江戸前寿司のたねとして使われるようになったのはここ数年のこと。僕が初めて食べたのも確か金沢の寿司屋だったと思います。サケの仲間ですがサケのような匂いやクセはなく、ふんわりした食感でなんとも上品な魚です。

そのサクラマスの中で最も美味とされ、別格の扱いを受けているのが“板マス”です。太って体が板のように四角い形になったものの呼称で、水揚げされたサクラマスの3万本に1本しかないという、超がつくほどの稀少品。

これはもう脂ののりが凄い。お腹なんてマグロの大トロみたいに脂肪の層ができています。しかもその脂が上質でまさにとろけるような味わい。思わず「旨い!」と声を上げてしまいます。

滅多に食べられるものではないのですが、もし運良く寿司屋で出会ったら、迷わず頼んでみて下さい。きっと感動されるのではないでしょうか。

 

 

・第1位 タイ(マダイ)

 

第1位はタイ(マダイ)。これはまあ、当然の結果ですよね。タイは“魚の王”、すべての魚介の頂点に立つ存在ですから。よく「西のタイ、東のマグロ」と言われますけど、僕もこの2つがすべての寿司だねのトップだと思っています。

ただ、かくいう僕も20年くらい前までタイという魚の真価をまったくわかっていませんでした。昔は明石や淡路島の極上のタイは京都や大阪の料亭や懐石料理の店に直行し、東京の寿司屋にはほとんど入ってこなかったんです。だから大阪の名店『福喜鮨』で、初めて最高クラスのタイを食べた時は本当に驚きました。

極上のタイはまさに旨みの塊。口に入れると氷が融けるかのように旨みが舌の上で広がっていきます。皮と身の間の脂が特に旨く、皮そのものも旨いので、湯霜にして皮をつけたまま食べると最高に美味しい。味も複雑でエビ、カニ、貝と、タイが餌として食べているものの旨みと甘みがすべて融合している感じです。

有名な産地は先に挙げた明石と淡路島、そして福岡県の玄界灘や神奈川県の佐島などですが、トップ中のトップは明石ですね。明石のタイはもともと品質が高い上に“神経抜き”を始めとする活け締めの技術が高いので、身が活きている。だから上手に寝かすとぐっと旨みが強くなります。

旬は産卵期に備えて栄養を貯える冬から早春。秋の“紅葉鯛”も人気ですが、僕は産卵直前の3月が抜群に旨いと思います。3月の明石のタイは身が透き通っていて、包丁で皮をひくと薄く銀皮が残って、芸術品みたいに美しい。タイの銀皮は包丁の技術がないと綺麗に残らないので、腕のいい職人のいる寿司屋で食べることをおすすめします。

 

 

【次回に続く】 ※次回連載は3月1日を予定しています。

 

 

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