連載第47回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

納豆は納豆でも「ネバネバしない納豆」、そして「匂わない納豆」

 

コロナ禍において自分である程度気をつけられるものといえば日々の「食べるもの」。そんな思いも込めて昨年末には納豆について書きましたが、2021年もさっそく納豆ネタですよ~。

 

ヨーロッパでの「和食」のイメージといえば、とにかく身体によさそうで「ヘルシー」なイメージがあります。そのため、和食という和食はどんなものも人気・・・と言いたいところですが、あの納豆に対してはハードルが高いのですね。

 

いくら「納豆を食べ続けると身体にこんなにいいことがある」と力説したところで、実際に納豆を前にした時のあの「匂い」と「ネバネバ」に参ってしまう人が多いのです。そんなわけで納豆をトライする前に退散してしまう外国人が多いのですね。

 

ただ逆にいえば、これは「ネバネバさえなければ受け入れられる要素が高くなる」ということでもあります。前にテレビを見ていたら、茨城県の納豆メーカーが作った「糸を引かない納豆」を用いて東京のフランス料理店の料理長が「フランス料理にマッチした納豆レシピ」をフランスはリヨンの「シラ国際外食産業見本市」で欧米人に紹介する様子が写っていて、旦那と一緒にテレビの前で釘付けになってしまいました。

 

何が衝撃的だったかって、納豆がちょっぴり気取った立食パーティーの会場に登場していたことです。

 

立食パーティーで「糸の引かない納豆」を小さなスプーンで、パテのようにサブレに載せていく人々。ネバネバしない納豆の名前は「豆乃香」(MAMENOKA)で、こちらをフォアグラのパテの下に敷いていただくと美味しいのだとか。そのほかに、発酵バターの中に納豆(糸を引かない納豆「豆乃香」)を入れたものもありました。

 

このように日本の納豆は「発酵食品で、身体によく、あなた方(欧米人)が普段食べているものとの相性もバッチリなんですよ!」というメッセージとともにヨーロッパに上陸したのでした。

 

筆者の見た目は欧米人のオバサンですが、中身はニッポン人の心を持っていたりしますので、テレビで「納豆がヨーロッパに上陸した」と聞いた時は本当に嬉しかったです。

 

ただ嬉しいという気持ちと同時に、「あのさ・・・糸を引かない納豆ってどうなのよ・・・?アンタたち(フランス人やドイツ人)の食べるチーズだって臭いでしょう?でもそれがいいんじゃないの?「臭くないチーズ」なんて食べたって美味しくないでしょう?チーズは臭いからこそチーズであるように、納豆はネバネバしていて臭いからこそ納豆なのですよ!!」と説教したい衝動に駆られました。

 

納豆愛の強さから「納豆が臭くて糸を引くのは当たり前だろ!!」とある種の怒りを感じていた筆者ですが、、、、先日、来日して24年目にして初めてあの有名なミツカンの「におわなっとう」を買ってみました。

 

それで半信半疑で食べてみたところ・・・あら不思議。美味しいではないですか!

 

ただ匂いがないせいか、その分ネバネバさせてやる!!とムキになってしまい、普通の納豆を食べる時よりも倍ぐらいかき混ぜてネバネバにしました(笑)

 

先日、家で手巻き寿司を作った際に「におわなっとう」を使ったらとてもしっくりきました。酢飯には「匂わない納豆」のほうが合う気がしたのです。

 

 

それにしても食べ物って、「昔ながらの決まった食べ方」にこだわるのもアリですが、どんどんアレンジしていくというのもアリなんですよね。

 

「におわなっとう」を混ぜ混ぜしながら、納豆への思い込みが強過ぎた自分を反省した次第であります。

 

反省といえば、今まで「納豆はニッポンにしかないものである」と思っていましたが、これも私の思い込みでした。

 

いま「幻のアフリカ納豆を追え!」(新潮社)という本を繰り返し読んでいるのですが、タイトル通り、納豆はアフリカ大陸にも存在するのです。

 

それも、ニッポンの納豆が向こう(アフリカ)に渡って拡がった・・・・のではなく、元々現地にあるものらしいのです。

 

たとえば西アフリカの国・セネガルにある納豆はその名も「ネテトウ」です。すごいですよね、名前もニッポンの納豆となんだか似ています。

 

著者である高野秀行さんは本のなかで「もしかしたら日本語の納豆という言葉は、セネガルのウォロフ語から来ているのではないか」という仮説を立てていたぐらいです。(その根拠に関しては「幻のアフリカ納豆を追え!」60頁をご覧ください)

Ⓒ高野秀行/新潮社

 

セネガルの納豆は(日本のように大豆ではなく)パルキアという木の豆(種子)で、現地では「ネレ」と呼ばれています。パルキアは野生の木で、豆の皮が固く、皮を取り除いた後でも、豆を煮ただけでは食べられないのだそう。そのため、この豆を発酵させる必要があり、そこから出来上がったのがネテトウ(納豆)というわけです。

 

それにしても笑ったのは、著者の高野さんが現地のセネガル人に「日本にも納豆があるんですよ!」と言ったら、現地の人が「え?セネガルから輸入しているの?」というリアクションをしたくだり。高野さんが「いえ、日本にも昔から納豆があるんですよ。」と説明をしたら、セネガル人に「本当?信じられない!」と言われたそうです(「幻のアフリカ納豆を追え!」64頁を参照)。セネガル人の「納豆」にまつわるリアクションは、日本人とそっくりですね~。

 

日本人とそっくりといえば、セネガル人も納豆は日本人と同様に「お米」と一緒に食べます。米食の歴史は長く、江戸時代にセネガルでは既に稲作をしていたのだとか(詳しくは92頁~93頁をご一読ください)。日本でいう「納豆吹き込みご飯」がセネガルにもあるそうです。

 

自粛生活で外出の機会がめっきり減りましたが、家で「幻のアフリカ納豆を追え!」を読みながらアフリカを探検している気分になれました。96頁に載っている「セネガルのオクラとネテトウ(納豆)をお米と混ぜた写真」を見て、自分も食べてみたくなり、オクラを買ってきて、家で納豆と混ぜて自分も食べてみたり。あ、本には「セネガルのネテトウとオクラを混ぜてお米と一緒に食べると、納豆卵かけご飯のような食感と味」と書いてありましたが、日本で納豆を食べる場合、やっぱり納豆はオクラよりも生卵と一緒に食べたほうが美味しいかも。

 

・・・・あああ、テーマが「納豆」だと、つい熱が入り長々と書いてしまう私です。

 

次回は2021年2月下旬更新予定です。

 

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/ 著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)など。

ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/

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