【大好評☆連載コラム】早川光の「お楽しみは、来月!!」3月に食べたい寿司だね(前編)

 

連載第19回 3月に食べたい寿司だね

江戸前寿司には、その月に旬のピークを迎えるもの、あるいは漁期などの理由でその月にしか食べられないものなど、期間限定の寿司だねがあります。

述べ3.000軒の寿司を食べてきた早川光が、来月にどうしても食べたい、とっておきの寿司だねBest3&4を紹介します。

 

・第4位 ノドグロ

 

第4位はノドグロ。正式な名称は“アカムツ”ですが、今は全国的に“ノドグロ”の方が浸透しています。口の奥、人間で言えば喉にあたる部分が黒い色をしていることからつけられたもので、もともとは北陸、山陰など日本海沿岸で使われていた呼称です。

水深100〜200メートルの海域に棲む魚で、青森から九州南岸まで広いエリアに分布しています。刺身より塩焼きや煮付けなど加熱した方が美味しいことから、握り寿司にはあまり使っていませんでしたが、10年くらい前から皮目を炙ってから握るのが流行し、今は人気のたねとなっています。

産地で有名なのは富山県、石川県、山口県、長崎県のあたり。特に長崎県対馬のノドグロは『ベニヒトミ(紅瞳)』という名前でブランド化されています。

でも僕が好きなのは竹岡、銚子、天津小湊といった千葉県産のノドグロです。あくまで個人的な印象ですが、千葉県産のノドグロは脂が軽くさらりとしているので、日本海産のものに比べて握りに合うと思います。

旬は冬と言われていますが、個体差が大きく、海の深い場所にいる魚なので夏でも脂がのっていたりします。安定して旨いと思うのは早春。2月下旬から3月のあたりです。

最近は皮目を炙ったノドグロを、握りではなく小さな丼にして出す店がありますが、これはお薦めです。身をほぐしてシャリとよく混ぜてから食べると、握りとは全然違う美味しさがあります。シャリの温度が高いほどノドグロの脂が早く融けて、より旨さと甘みが際立ちます。

 

 

・第3位 シラウオ

 

 

第3位はシラウオ。サケ目シラウオ科の魚で、姿が似ているスズキ目ハゼ科のシロウオ(素魚)とはまったくの別種です。シロウオが海水魚なのに対しシラウオは汽水域の周辺に生息していて、分類上はアユやシシャモなどに近いとされています。

かつて隅田川で漁が行われていた頃は、シラウオが江戸に春の訪れを告げる風物詩のひとつとされていました。そのため江戸前料理とは縁が深く、寿司だねとしてもコハダやアナゴと共に最も古いもののひとつです。今でも古い伝統を守る寿司屋ではシラウオを桜の葉で包んで蒸し、シャリとの間におぼろを挟み、かんぴょうを帯にして握ります。

汽水域の魚なので産地は全国でも限られています。有名なのは茨城県の霞ヶ浦、島根県の宍道湖、そして佐賀県の有明海ですが、僕がこれまでに食べた中で一番旨いと思ったのは、兵庫県赤穂市を流れる千種川のシラウオです。これは身が透き通っていて美しく、他の産地よりひと回りくらい大きい。そして旨みが強く後味も爽やか。シラウオは後味に少し苦みがあるんですが、その苦みが上品で心地いいんですよね。脂のない魚なので旨さの表現が難しいんですけど、日本酒にぴったり合う味わいです。

千種川は名水百選に選定された清流。河口から海の方向に網を下ろして行う“刺し網漁”でシラウオを獲ります。漁期は2月から4月上旬までの2ヵ月間ですが、上質なものが揚がるのは3月いっぱいと言われています。

ただ残念なことに、東京で千種川のシラウオを使う寿司屋はほとんどありません。それは天ぷら屋の需要が高いから。シラウオは寿司もいいけど天ぷらにするとさらに旨いんですよね。だから大好きな魚ですし、江戸前寿司には欠かせないたねですが、第3位が妥当なところかなと思います。

 

 

 

【次回に続く】 ※次回連載は2月15日を予定しています。

 

 

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