【大好評☆連載コラム】早川光の「お楽しみは、来月!!」10月に食べたい寿司だね(後編)

題沸騰の連載コラム第10回!

寿司マスター☆早川光の「お楽しみは、来月!!」。

ホンモノの寿司通は、いったいどんな寿司だねを楽しみにして日々過ごしているのか?

今回は早川光が10月に食べたい寿司だねBest1&2を発表しちゃいます。

来月が来るのが待ち遠しいね~!

 

連載第10回 10月に食べたい寿司だね(後編)

江戸前寿司には、その月に旬のピークを迎えるもの、あるいは漁期などの理由でその月にしか食べられないものなど、期間限定の寿司だねがあります。

述べ3.000軒の寿司を食べてきた早川光が、来月にどうしても食べたい、とっておきの寿司だねBest4を前&後編で紹介します。

 

・第2位 ブリ(天上ブリ)

 

第2位はブリ。「え? なんで10月なの?」と思われる人も多いのではないかと思います。ブリといえば真冬の厳寒期に日本海で獲れる寒ブリ、とりわけ富山県氷見の“氷見ブリ”の評価が高いですからね。

もちろん氷見の寒ブリは美味しいです。ただ握りにして食べるには少し脂がのりすぎている。それがずっと気になっていました。冬に北陸の寿司屋を訪ねて寒ブリの握りが出てくるたびに「脂が強くてシャリが負けてる」と感じていました。

それがある時、めちゃめちゃシャリに合う、とびきり旨いブリに出会いました。それが北海道余市の“天上ブリ”です。

ブリは春から夏にかけ日本近海を北上し、秋口に北海道に到達します。そしてこのうち余市沖の定置網で獲れたものを“天上ブリ”と呼びます。要するに初物のブリのことで、例年9月中旬くらいから出回ります。秋のブリですから寒ブリほど脂が強くなく、しかもその脂の質が高い。口どけがよく、甘く、さらりとしてクセは一切ありません。初めて食べた時は「津軽海峡マグロの脂に近い」と感じました。10月になると魚体も大きくなり、数日寝かすとぐっと旨みも出てきます。

寿司だねとして僕の理想に近い天上ブリですが、ただひとつの欠点は身が固いこと。かといって柔らかくなるまで熟成させるとクセが出てしまうので、薄く切りつけて握るのがベスト。銀座『鮨鈴木』では紙のように薄く切った天上ブリを三枚重ねにして握るのですが、これがもう言葉にならないくらい旨い。目を閉じて食べたらベストシーズンの大間マグロの霜降りの大トロと区別がつかないかもしれません。

 

 

・第1位 アナゴ

 

第1位はアナゴ。これも意外に思われるかもしれません。アナゴは江戸前料理には欠かせない食材で、寿司屋ではほぼ通年出てきますが、基本的に旬は“入梅時から夏”とされています。僕も以前は自分の著書にアナゴの旬を「6月、7月」と書いていました。

ただこれは東京湾の“江戸前アナゴ”の旬なんですね。かつては東京の名店の多くが江戸前アナゴを使っていました。でも漁獲が減り品質にムラが出るようになったため、今は長崎県対馬産の“対馬アナゴ”を使うのがスタンダードになっています。対馬アナゴの漁場は水深が深く水温が安定していて、季節によって品質があまり変わらないため使いやすいのです。

ではその対馬アナゴの旬はいつなのかというと、これが難しい。この原稿を書く前にいろんな寿司職人に意見を聞いたのですが、けっこう意見が分かれます。そんなわけで、これは僕の独断ですが、握り寿司にして旨いのは10月だと思います。

江戸前寿司の場合、アナゴはたっぷりのつゆで煮る“煮アナゴ”にするので、脂がのっていないと旨くない。かといって筋肉の発達していないアナゴだと身が崩れてしまう。そのバランスが最も取れているのが10月の対馬アナゴではないかと。

アナゴほどいい時とダメな時の差が大きい寿司だねはありません。ダメなアナゴは身が固くてぼそぼそ。いい時はゼラチン質が多くてふっくら。そして極上のアナゴはさらに肌理が細かく、舌にからみつくような食感があります。

僕は日本橋人形町『喜寿司』のアナゴが大好きで、定期的に食べに行っているのですが、去年も一昨年も10月にこの極上の対馬アナゴが出てきました。極上アナゴはゼラチン質の旨みも脂の甘みも、うっとりするような香りも全部持ってる。それが舌にからみついてくるわけだから旨くないわけがない。ウナギのように蒸して焼くのではなく、アナゴを“煮る”という技術を考え出した江戸前寿司の先人は凄いなあとつくづく思います。

 

 

【次回からは11月に食べたい寿司です】 ※次回掲載は10月1日を予定しています。

 

寿司動画

㐂寿司