連載第40回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

【生】で食べる豚肉 ドイツのHackepeter(ハッケペーター)

 

ニッポンの江戸前寿司とはちょっと違うけれど、今や世界で「スーシー」(欧米の発音でそう言ってみました)を知らない人はいません。

 

一昔前であれば、「生の魚を食べるなんて・・・」と顔をしかめていた欧米人も、今やSUSHIは人気の食べ物なのですから、人生なにがあるか分かりません(笑)

 

あ、先ほど「ニッポンの江戸前寿司とはちょっと違う」と書いたのは、日本の感覚だと首をかしげるような寿司

)も世界には多く見られるからです。でも食事はそれぞれの場所で美味しく食べてもらうのが一番ですから、アレンジするのが必ずしも悪いことだとはいえません。

 

そんな世界で人気の寿司ですが、筆者の母国ドイツにも「寿司ファン」は多いものの、バイエルン州の田舎のほうにいくと、やっぱり食に関して保守的な人も多いので、「SUSHIは生ものだから食べられない」という人もいたりします。ただそう言っている人の中には、SUSHIをトライしたこともない、いわばお寿司における「食わず嫌い」も結構な数いるのではないかと疑っています・・・

 

ひとつ言えるのは、同じヨーロッパでも、海に囲まれているイタリアやスペインと違って、ドイツの場合は山間部が多いので、「生ものを食べる」ということにはもともと抵抗のあるドイツ人が多いということです。

 

筆者もコロナ以前の時代に、仕事や遊びでドイツ人が来日した際には、その人が生ものが食べられるかどうか気にしながら計画を立てたものです。

 

ところが!実はドイツにも生ものを食べる習慣はあったのでした・・・。それも、「生の豚肉」です!びっくりでしょう。

 

日本に来てずっと忘れていた(?)のですが、よく考えてみたら、筆者がドイツのミュンヘンに住んでいた頃は地元のお肉屋さん兼サンドイッチ屋さんであるVinzenzmurrで生の豚肉を買って食べていたのでした。

 

・・・というと誤解があるようなので、詳しく解説します。

筆者が食べていたのはHackepeter(ハッケペーター)と呼ばれるもので、パンの上に生の豚肉とタマネギがのっています。ドイツだと、出先で気軽に食べられるものです。

 

こんな感じです。

なんだかニッポンのネギトロに似てません?で、味なんですが、これもネギトロと似てるんです(笑)

 

ちなみに筆者の知り合いの日本人男性は「ドイツでHackepeterと一緒にビールを飲んだけど、Hackepeterは日本酒も合うんじゃないかと思って気になって仕方がなかった」と言っていました(笑)

 

Hackepeterは生の豚ミンチに、塩やたまねぎ、ハーブなどを混ぜたもので、そのままパンにのせて食べます。あたたかい食べ物ではなく常温もしくは少し冷えた状態で食べるので、どちらかというと夏によく食べます。そういえば私がミュンヘンで食べていたのも夏でした。

 

その生の豚肉ですが、もちろん何も気にせず生の豚肉を食べるはずもなく(それは危険です!)、Hackepeterに使われる肉は厳しい規定のもと提供されています。ドイツにはHackfleisch-Verordnungという「ひき肉に関する法律」(略して「ひき肉令」)があり、それに沿ったひき肉を売ることができます。肉をミンチにする際に、半分凍った肉をカッターに入れますが、ミンチ状にする時の温度が2度以上になってはいけない、という規定があります。また、その日に製造されたひき肉のみが販売可能なので、当たり前かもしれませんが、【生】ということで【新鮮】でなければいけません。日本ではなんだか聞き慣れない言葉ですが、要は【新鮮な豚肉】というわけですね。

 

基本的には脂身のないひき肉(Mett)が使われています。ドイツの肉処理場には、肉に寄生虫などがいないかを一頭一頭検査する人がいるのですが、ひき肉は当たり前ですがその検査にパスしたものしか売られていません。

 

生ものをあまり食べないドイツ人が豚肉を生で食べるとはちょっとびっくりですよね。でも従来のドイツ料理には豚肉が多いので、「どんな形であっても豚肉は食べたい」ということなのかもしれません。

 

日本だと、お刺身(魚)だけではなく、鶏肉の刺身や、牛のタタキ、それに生卵など、色んなものを「生」で食べる習慣があります。でも「生の豚肉」を食べるというのは日本では聞いたことがなく、考えてみれば何だか意外ですよね。

 

次回は7月中旬更新予定です。

 

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住22年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。ホームページ「ハーフを考えよう!」http://half-sandra.com/ 著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「満員電車は観光地!?」(流水りんことの共著 / KKベストセラーズ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)など。

ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/

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