【新連載】早川光の「お楽しみは、来月!!」

寿司マスター☆早川光の新連載コラムがスタートしました!

タイトルは、早川光の「お楽しみは、来月!!」。

ホンモノの寿司通は、いったいどんな寿司だねを楽しみにして日々過ごしているのか?

このコラムを読んで、来月が来るのを首を長~くして待っててね!

 

連載第1回 6月に食べたい寿司だね

 

江戸前寿司には、その月に旬のピークを迎えるもの、あるいは漁期などの理由でその月にしか食べられないものなど、期間限定の寿司だねがあります。

のべ3.000軒の寿司を食べてきた早川光が、その月にどうしても食べたい、とっておきの寿司だねBest4を紹介します。

 

 

・第4位 シャコ

“6月に食べたい寿司だね”と聞いて、僕が真っ先に思い浮かべたのはシャコ。シャコは夏に産卵期を迎えるため、その直前にあたる6月にはたっぷり栄養を貯えて旨くなるからです。メスはお腹にオレンジ色の卵(内子)を抱え、オスは身がふっくらして甘みが出てきます。

この卵のことを東京の寿司屋では古くから“カツブシ”と呼び、珍重しています。その名の通り鰹節に似た強い旨みがあり、火を通すとホクホクした食感になって、日本酒によく合います。

伝統の江戸前寿司では、活けではなく茹でたシャコを仕入れて、醤油と味醂、砂糖を合わせた薄口のつゆで漬け込みにします。シャコは見た目と違ってかなり繊細な生き物で、水槽の中で活かしておくとすぐに痩せて味が落ちてしまうので、漁港で茹でた“浜茹で”を使った方が美味しいのです。

その浜茹での技術に優れていたのが神奈川県小柴漁港の“小柴シャコ”。寿司職人の間では日本一と評価されていましたが、残念ながら20年くらい前から漁獲量が激減し、今ではすっかり幻の味となってしまいました。それに次ぐのが愛知県三河湾、香川県観音寺のシャコで、特に三河湾の小ぶりのものは小柴産に近い食感と甘みがあります。

僕は酒の肴としては卵を持ったメスを、握りには身が柔らかくシャリになじむオスを注文します。そして寿司屋にあれば必ず頼むのが“爪の身”。シャコの爪(捕脚)の身肉の部分で米粒くらいの大きさですが、すごく味が濃い。シャコの味は“エビとカニの中間”と言われますが、爪の身は明らかにカニ寄り。これを数十粒集めて作る軍艦巻は最高の贅沢。頬張ると口いっぱいに旨みが溢れます。

 

・第3位 アユ

第3位はアユ。アユといえば日本の代表的な川魚で、塩焼きにして食べるというイメージしかないかもしれませんが、実は古くから江戸前寿司で使われてきた寿司だねです。明治10年(1877)に川端玉章という画家が手がけた盛り込み寿司の絵にも、アユの姿寿司が描かれています。

もっともアユは寄生虫の心配があるため生のまま握ることはありません。江戸前寿司では酢じめにするのが基本です。ただし生酢(薄めていない酢)でしめると身が固くなってしまうので、日本酒で割った酢(酒酢)を使い、時間をかけてゆっくりと酢を浸透させます。こうすることで骨も柔らかくなり、姿寿司として頭ごと食べられるようになります。

アユには岐阜県長良川上流の“郡上鮎”や山形県最上小国川の“松原鮎”、伝統的な火振り漁で獲る高知県“四万十川の鮎”といったブランドが全国にあるのですが、僕が一番だと思うのは高津川の天然アユ。島根県の西部を流れる高津川は一級河川の中で唯一、支流も含めてダムが一切ないという日本有数の清流。その清流で育まれる川苔を食べているので、高津川のアユは清涼感のある甘い香りがします。川魚特有のほのかな苦味も、舌に心地よい余韻となって残ります。

高津川のアユ漁が解禁になるのは例年6月。東京では浅草の『鮨久いち』が高津川の天然アユを使った姿寿司を出していますが、これが旨い。甘い香りのアユに酢じめの酸味が加わると、大げさでなく新鮮なフルーツのような味わいに。こればかりは食べた人はみなびっくりするのではないでしょうか。

 

【次回につづく】  ※次回連載は5月10日予定です。

 

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