連載第22回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

 

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

【春を食べる】~ニッポンの旬、ドイツの旬その2

 

春ですね。気持ちよくお散歩できるこの季節が好きです。と同時に筆者にとって春は食べ歩きの季節でもあります。「食欲の秋」ならぬ「食欲の春」ですね。

 

以前「旬」について書きましたが、今のこの時期はアオリイカが美味しいですね。柔らかな食感と甘みがあって幸せな気持ちになります。先日この話をしたら「欧米人はこういう味は苦手なのかと思いました」と言われてしまいましたが、美味しいものは美味しいのですよ。

さて、筆者の母国ドイツで「春の味」というと・・・・それは「白アスパラガス」でございます。白アスパラガスはドイツ語で「シュパーゲル」ですが、こちらは4月中旬からドイツのスーパーや市場で売られ始め、6月24日の「聖ヨハネ」の日まで食べられています。まさに今が旬のシュパーゲルですが、ドイツ人のシュパーゲルに対する思い入れは強く、それはどこかニッポン人の「桜」に対する思い入れと似ています。南から北に向かい進行する「桜前線」のように、シュパーゲルに関しても、シュパーゲル前線といえるようなものがあるのです。というのも、シュパーゲルの季節はイタリアやベルギーなどヨーロッパの南のほうでスタートし、これがヨーロッパの中では北のほうに位置するドイツに移動するのは4月中旬頃なのですね。

 

ところで先日、外国人観光客が桜を揺らしぞんざいに扱う様子が桜を大事にする日本人の間で物議を醸しましたが、「シュパーゲル」もまたドイツ人にとって非常に大事なものです。ドイツではシュパーゲルは「切らずに茹でる」のが筋であり、うっかり切って茹でるとドイツ人に怒られたりします。それぐらいシュパーゲルに関しては、こだわりの強い人が多いのですね。

 

それもそのはず、シュパーゲルは高価な食べ物です。日光を極力避けてそれは大切に育てられます。なお収穫は手作業で行われることが多いため、かなり手間がかかっているのですね。ちなみに白アスパラガスの90%以上は水分なので、大事なのは鮮度。朝の摂れたてのシュパーゲルは本当に美味しいです。もしその日のうちに食べられない場合は、濡れた布巾に包んだ上で冷蔵庫に保管するとよいでしょう。

 

さて、そのシュパーゲルの食べ方ですが、いたってシンプルです。

白アスパラガスはかなり長いのですが、前述のように切らずにそのまま大量に茹でますので、かなり大きな鍋が必要です。立てて10分、横にして5分程度茹でます。シュパーゲルにかけるソースは主に二種類あります。バター、卵黄、レモンに塩コショウを混ぜて作られた「オランデーズソース」。そして、バターを溶かすだけの「とかしバター」をかけていただくスタイルです。筆者は後者がシンプルで好きです。白アスパラガスの本来の味が楽しめます。

ちなみにシュパーゲルの選び方は『太さ』が大事。太いものがジューシーで美味しいのです。それにしても、ドイツでは一回分のシュパーゲルの消費量が多く、一回の食事に一人500グラムのシュパーゲルが使われています。日本国内のドイツ料理店でも、シュパーゲルが食べられるところがありますが、ニッポンなので、ちょっとお上品サイズになっていたりします(笑)こちらは私がよく通っている「三輪亭」で撮ったシュパーゲルの写真です。

シュパーゲルの季節のドイツ人はとにかく社交的です。普段は日本人のように「一緒に食事をする」という社交はあまりしないドイツ人ですが、この時期になると、「シュパーゲルを食べに行こう」と友人知人と連れ立って食事に行ったり、シュパーゲルがらみのイベントもあったりします。

これは東京のドイツ関連のイベントの際、ビュッフェに出たシュパーゲル。

そんなこんなで、ニッポンの「冷やし中華、はじめました」ではないけれど、ドイツのこの時期のレストランには「シュパーゲル、はじめました」と書かれた看板が入口に立っていたりします。そんなとき、「今年もこの季節が来たんだな」となんだか嬉しくなるのでした。

シュパーゲルの味は、これは決してアオリイカにこじつけているわけではないのですが、「柔らかな食感」と「甘み」がポイント。そして白アスパラガスの優しい香りはまさに春の香りです。アオリイカが海の味なら、白アスパラガスは畑の味といったところでしょうか。

 

余談ですが、筆者は子供の頃シュパーゲルが嫌いでした。まあシュパーゲルは一般的には子供が好きな味ではなく、あくまでも「大人の味」なのですね。そんなところもアオリイカと似ているかもしれません(笑)

 

 

次回の更新は5月中旬頃を予定しております。

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/