『早川光 江戸前寿司の世界~至福のおまかせ編~』赤坂・すし晴 中編

《おつまみ8品目 あん肝と奈良漬けの和えもの》

小皿に盛りつけた8品目は、裏ごししたあん肝に細かく刻んだ奈良漬けを加えた“和えもの”。

「和食のあん肝と奈良漬けを組み合わせた料理を自分なりにアレンジしました。奈良漬けの味が強いので、あん肝を少し薄味に炊いてあるのがポイントです」

食べればあん肝と奈良漬けの不思議な相性の良さに驚きます。

 

ここで「あん肝に合うものを」というリクエストで2つ目の日本酒を注文。

親方が選んだのは、

宮城県『新澤醸造店』の特別純米『あたごのまつ』。

「抜けがいい酒で、そこまで芳醇な味わいじゃないので、味の濃いアン肝とはよく合います」

端麗辛口のすっきりした味わいが、あん肝の甘みを引き立て、舌に残る脂をさらりと流してくれます。

 

 

《おつまみ9品目 カキの胡麻油づけ》

9品目はカキのオイル漬け。イタリア料理ならオリーブオイルですが、親方は太白胡麻油を使います。

「カキから取った出汁を煮詰めて、そこにカキを戻して鍋止め(火を止めそのまま置いて味を馴染ませること)にしてから、カキだけを胡麻油に漬けます。出汁をしっかり含んでいるので、日本酒にも合うんです」

『あたごのまつ』の柑橘類を思わせる酸のキレの良さは、クリーミーなカキとも相性抜群です。

 

ここで親方、シャリの入ったお櫃を用意し、いよいよおまかせの後半戦“握り”が始まります。

 

《握り2カン目 コハダ》

居ずまいを正し、背筋をピンと伸ばした親方が握ったのは、コハダ。江戸前寿司を代表する寿司だねです。

「コハダは私の大好きなネタ。たっぷり食べていただきたいので、一尾のコハダをまるごと使った“まるづけ”で握ります」

大きな“まるづけ”を口に含むと、その皮の柔らかさに驚きます。そして噛むほどに上質な脂がじんわりと舌に溢れ、それがひと肌のシャリとよく馴染みます。

 

《握り3カン目 赤貝》

次は赤貝の握り。身が厚く食感がいい大分産を使います。

「ひと玉が150グラムもある大きなサイズですが、味はしっかりしていますし、何より香りがすごいんです」

適度な弾力があり歯切れのいい身をサクッと噛めば、春の潮風のように華やかな香りが鼻腔をくすぐります。

 

《握り4カン目 カンヌキ》

握り4カン目はカンヌキ。江戸前寿司では大きめのサイズのサヨリのことをカンヌキと呼びます。

「サヨリは大きくても大味にならない。逆に旨みがのってくるんです。ただし水分があるので、ひと塩して一晩寝かすことでさらに味が引き立ちます」

美しく飾り包丁の入ったカンヌキは、ひと塩によって甘みが増し、淡白な白身とは思えないほど、力強い味わいがします。

 

《握り5カン目 スミイカ》

なぜか握りを皿の隅に置く親方。その理由を問うと「スミ(隅)イカだから」という答え。「一時期はやめてたんですけど、やらないと寂しいというお客さまもいるので」

もともと淡白な味のスミイカに大葉を挟み、上からレモンを絞ることで、さらに清涼感を際立たせています。

 

《おつまみ10品目 太刀魚南蛮漬》

スミイカで口の中がさっぱりしたところで、再びおつまみ。

千葉県富津産の太刀魚を油で揚げ、出汁と酢を合わせたたれに漬けた“南蛮漬け”です。

「握りの途中で少し揚げ物を挟むと、さらに日本酒が進むと思いまして」

 

 

そんなわけで3つ目の日本酒をリクエスト。

親方が自信を持って選んだのは、

京都府伏見『山本本家』の純米吟醸『名もなき酒』。

「酒米は山田錦なんですが、米をめっちゃ磨いてるので、いい意味で山田錦っぽくない。ガツンとくる、男らしい味が揚げ物に合うと思います」

 

《おつまみ11品目 子持ち昆布と若鮎のフライ》

次も揚げ物。アラスカ産子持ち昆布と琵琶湖産若鮎のフライです。

「子持ち昆布はかつお出汁ベースのつゆに漬け込んでしっかり味を入れてから揚げています。火を入れるとプリプリした食感になるのも面白いと思います」

味の印象が薄い子持ち昆布だけに、どんなものかと思いながら食べると、これが旨い。昆布にかつお出汁がプラスされ、しかも加熱したことで、びっくりするほど濃厚な味わいになっています。

そして一方の若鮎は、鮎特有のほのかな苦みが『名もなき酒』の力強い味にピタリと合います。

 

《握り6カン目 クルマエビ》

揚げ物と『名もなき酒』のマリアージュを楽しんだ後は、また握りに戻ります。

握り6カン目はクルマエビ。茹でたてを少し冷ましてから握ります。

「茹で加減はミディアムレアですが、ミソの部分にはしっかり火を通すように意識しています」

食べれば身の甘みとミソのコク深い旨みがしっかりと舌に伝わり、噛めば噛むほど甘みが強くなるように感じます。

「この握りはよく噛んでほしいです。“噛んで旨くする”ということをすごく意識していますので」

 

 

《次回に続く》

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