連載第18回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

ニッポンの旬、ドイツの旬

 

和食には「旬」があるのが好きです。

 

お寿司をいただくとき、以前は「自分の好み」を中心に注文しがちでしたが(そうすると、イクラとウニが多くなります…)、最近は「旬」のものを意識するようになりました。

 

今の2月はクロマグロが脂がのっていておいしいですよね。

 

マグロにはアンセリンやヒスチジンが多く含まれているとのこと。ヨーロッパでも最近マグロにスポットがあたっています。一部の人のあいだとはいえ「肉よりも魚」と考える人も増えてきています。ただ、ドイツなんかだと、マグロの「旬」にまで話が及ぶことはあまりありません。マグロに限らないことですが、「旬」にこだわるのはやはり食にこだわる日本ならでは、なのかもしれません。

 

栄養の面からも、もちろんマグロは一年にわたりいつ食べてもよいのですが、やっぱり2月の今の時期はクロマグロの脂ののり具合が絶妙。日本に来たばかりのころは「旬」と言われても、あまりピンと来なかった私ですが、「その季節においしいもの」ってやっぱりあるんだな、と思うようになりました。

 

余談ですが、いつだったか筆者はある女性に「今が女性として一番脂がのっているいい時期よね。」と言われたことがあります(笑)なんとなく意味は分かる気はしたものの、やっぱり確証がほしかったので、調べたところ、決して悪い意味ではなくポジティブなものとしても解釈できる感じだったので、安心しました(笑)人間に対して置き換えて言うのは面白いですね。

 

さて、「旬」に話を戻すと。

 

筆者の母国ドイツでは「旬の食べ物はない」と思われがちなのですが、実際は「ある」のでした。

 

今の季節のドイツの旬の食べ物はGrünkohl(グリューンコール)と呼ばれるケールで、北ドイツでよく食べられています。南ドイツ出身の筆者は、実はドイツの地元ではこのGrünkohlは食べたことはなく、日本に来て初めて、在日ドイツ人が集う会でこの北ドイツのGrünkohlをいただきました。味は説明しづらいのですが、イメージとしてはパセリとほうれん草の間のような感じかな。

 

さて、Grünkohlの調理の仕方ですが、ケールの葉だけ取って洗い、下茹でして水気を切ります。大き目の鍋でサラダオイルを熱して、まず脂身が多めのベーコンを炒めてから、みじん切りの玉ねぎを加えます。その後Grünkohlを鍋に入れ、煮ます。最後は塩コショウでお好みで味付け。(ベーコンの味が出るのが苦手な人はベーコンを省いて「玉ねぎ」だけを使うことも可能。)

 

こんな感じです。(ニッポンでは「青汁」で知られているケールですが、そのイメージとはだいぶ違うでしょう?笑)

 

ケールの手前にあるのがPinkelというケールと一緒にこの時期よく食べられている穀物と豚肉を混ぜたソーセージです。白いソーセージと同じく、皮は食べられないので、皮は剥き中身だけをいただきます。

 

Grünkohlの旬は「寒い時期」。これは、Grünkohlが霜が降りてから収穫されるからで、この時期のGrünkohlは糖度も栄養価も上がり美味しいです。ドイツの冬は基本的に北海道と同じぐらいの寒さですが、これぐらい気温が低いと、Grünkohlの糖度が高くなり、苦いケールの「甘み」が少し増します。ビタミンA、ビタミンC、鉄分やカリウムなどのミネラルも豊富なので、Grünkohlは冬の間の貴重な栄養素でもあります。「いつまでが旬か」はその年の冬の気候に左右されるので、寒さが続けば「3月」ぐらいまで食べられますし、早く暖かくなれば「旬」は2月末までぐらいです。まさに今の時期ですね。北ドイツではこのGrünkohlが寒い時期の楽しみとなっています。

 

ところで日本で面白いな、と思うのは、「今が旬の人」という言い方があることです。よくメディアなどでも耳にする言葉です。「まさに今のりにのっていて、みんなが応援したくなるような輝いている人」を指すようですが、「良い意味」で食べ物にたとえているところが、面白いですね。ドイツにも人間を食べ物に例えることはありますが、若くて成熟していない女性のことを少し見下した感じで”Junges Gemüse”(直訳「若い野菜」)と言うことがあり、あまりポジティブな感じでは使われていないのです。それに対して「今が旬の人」という言い方は完全にポジティブな意味で使われているので、やっぱり日本人は食べ物に対する愛が深いのだな、と思ったのでした。

 

次回の更新は3月上旬頃を予定しております。

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/