『早川光 江戸前寿司の世界』66~霜月のマグロ~

マグロ

鼻に抜ける極上の香り

マグロの中で最も高価な部位は蛇腹や霜降りといった大トロが取れる“腹カミ”のブロック。銀座の高級店が競ってこの“腹カミ”を買い求める中、日本橋人形町『㐂寿司』の親方、油井一浩さんは、腹ではなく背の身にこだわります。

「マグロは大トロより赤身。特に背の赤身が旨い‥というのがうちの信条。大トロは脂の甘みはありますけど、赤身のような旨みや酸味、コク深い味わいはない。そして香り。あの鼻に抜けるようなマグロ特有の香りは背の身ならではの魅力です」

この日仕入れたのは青森県大間産133キロのマグロの背の身。日本一のブランドと呼ばれる大間の、しかも旬真っ盛りのマグロですから、背とはいえ上質な脂がたっぷりのっています。

「赤身はもちろんですが、中トロも食べてほしいです。背の中トロは脂がまんべんなく入っているので、脂の甘みと赤身のコクが両方味わえます。とりわけ“血合いギシ”の部分は香りが素晴らしい。マグロ好きな人にはたまらないと思いますよ」