寿司用語 (18/12/03更新)

NEW《つけ場》

寿司職人が立ち、握りや切りつけの作業を行う、カウンターの内側のスペースのこと。つけ場の「つけ」は「漬け」のことで、江戸前鮨の原形である「なれずし」が魚と飯を桶に“漬けて”作ったことに由来している。寿司屋においては神聖な場所であり、客が勝手に立ち入ることは許されない。

 

NEW《手酢》

寿司を握る時、米粒が手につかないよう湿らせるために使う、酢で割った水のこと。同じ分量の酢と水を混ぜて(同割にして)使うのが基本で、陶器か金属製の器に入れ、つけ場(カウンターの内側)に置いて用いる。

 

《野締め》

本来は釣った魚をそのまま放置して死なせてしまうという意味だが、現在はイワシやサバなど網で大量に獲った魚を、船上や漁港で冷却水に入れ、自然死させることを言う。活け締めと違って即死ではないが、体温の上昇による品質の劣化を抑えるための方法として用いられる。

 

《活け締め》

生きた魚に苦痛を与えず即死させることで、身の鮮度が落ちないようにするための手法。釣り上げた魚が苦しんで暴れると体温が上昇し、体内の疲労物質が増えて味が落ちてしまうため、それを防ぐために考案された。魚の延髄部分を刃物で切断する、太い針を通すといったやり方がある。

 

《あがり》

寿司屋で供される熱い緑茶のこと。手早くたくさんの量を抽出するため、高級な煎茶ではなく粉茶(煎茶を製造する過程で出た粉状の茶葉)を使うのが一般的。“あがり”という呼称は、花柳界の符丁でお茶のことを「上がり花」と言ったことに由来する。

 

《お好み》

「おかませ」でも「おきまり」でもなく、客が自分の好きな寿司だねを選び、好きな順番で注文すること。20年ほど前まではこのスタイルがスタンダードだったが、おまかせが中心となってしまった現在は、お好みで注文できる店そのものが減少している。

 

《おきまり》

寿司屋で用意している握り一人前のセットメニューのこと。握り10カン前後で構成され、内容に応じて「松」「竹」「梅」といったランクづけがされているが、握りをランダムに注文する“お好み”より値段は安く設定されている。かつては江戸前寿司のほとんどの店にあったが、現在は一部の店にしか存在しないので注意が必要。

 

《玉子焼》

江戸前寿司の伝統的な玉子焼は、玉子にエビ(または白身魚)のすり身、砂糖、味醂などを加え、専用の鍋で焼き上げたもので、味も見た目も関西のだし巻き玉子とは大きく異なる。中にはすり身を一切入れないものや、山芋や大和芋を加えて作るものもあり、店によって味も食感もさまざま。厚さ1センチ程度のものを薄焼き、それ以上を厚焼きと呼んで区別している。

 

《本わさび》

魚の生臭みを消し、味にアクセントを与える、江戸前寿司には欠かせない調味料。アブラナ科ワサビ属の植物で、地下茎の部分をすりおろし、寿司だねに適量をつけて用いる。近縁種のセイヨウワサビ(ホースラディッシュ)や加工品の粉わさびと区別するために“本わさび”と呼ぶ。水質のいい渓流や湧水を利用して栽培される“水わさび”が味も香りも最上とされる。

 

《ちらしずし》

シャリに数種類の寿司だねを乗せる、あるいは混ぜて作る寿司の一種。シャリの上(または中)に寿司だねを“散らして”作ることからこの名がついた。江戸前寿司では酢じめのコハダ、茹でたエビ、煮たアナゴなど、調理したたねを細かく切って散らしたものを『ばらちらし』、生の魚を使うものを『生ちらし』と呼んで区別している。

 

《手巻き寿司》

巻き簾を使わず、手だけでシャリと寿司だねを海苔で巻いたもの。昭和46年に『築地玉壽司』が始めたとされるが、それより前から京橋『与志乃』で出していたという説もある。誰でも手早くできることから一般に広く普及し、現在では家庭料理のひとつとして定着している。

 

《軍艦巻》

シャリの周囲を海苔で巻き、その上に寿司だねを乗せたもの。イクラやウニなど形が崩れやすいものを寿司にするために考案された手法で、その元祖は『銀座久兵衛』とされている。名前の由来はその形が軍艦に似ていることから。

 

《太巻》

直径の太い巻き寿司のこと。江戸前寿司の場合は干瓢、玉子焼、おぼろ、茹でたエビ、煮アナゴ、甘辛く煮た椎茸などの複数の具材を用い、直径5センチから10センチ程度のものが一般的。店で食べるより持ち帰りのお土産用として作られることが多い。

 

《鉄火巻》

細巻の一種類で具にマグロを使ったもののこと。その名前の由来はマグロの身が火で熱せられた鉄のように赤いからとも、博打を行う場所(鉄火場)で間食として食べられていたからとも言われ、定説はない。マグロの赤身ではなくトロを具にしたものをトロ巻、さらにネギを加えたものをネギトロ巻と呼ぶ。

 

《細巻》

巻き寿司の中で、直径3センチ程度の口に入れやすい大きさのものの呼称。その見た目から鉄砲巻とも呼ばれる。江戸前寿司で最もポピュラーなのは甘辛く煮た干瓢を具にして巻く『かんぴょう巻』であり、かつては握りを食べ終えた後の締め(最後の一品)として、これを食べるのが通とされた。

 

 《巻き寿司》

具材と酢飯を海苔で巻く寿司の総称。巻き簾と呼ばれる竹製の簾に四角く切った焼き海苔を敷き、その上に酢飯を広げ具材を乗せて巻くのが基本。そのままでは食べにくいので、包丁でカットして食べることが多い。乾燥した海苔が酢飯の水分で柔らかくなる前に巻くのには高い技術が必要とされる。

 

《ガリ》

皮をむいた生姜を薄く切り、甘酢漬けにしたもの。生姜のさっぱりした香りと辛味が魚の生臭みを消してくれることから、口直しとして用いられる。最近は薄切りでなくぶつ切りにしたり、砂糖を使わない辛口のガリも増えている。食べる時にガリガリと音がすることがその語源とされている。

 

《初物》

その季節に初めて市場に入荷した寿司だねのこと。“はしり”とも言う。江戸前寿司では古くから初物を好む習慣があり、春の「初ガツオ」や初夏の「シンコ(コハダの幼魚)」、夏の「シンイカ(スミイカの幼体)」などは特に珍重される。

 

《隠し包丁》

生のイカやアワビ、鮮度がいい魚など、身が固く歯切れのよくない寿司だねを握りに合うようにするため、筋を断ち切るように細かい包丁を入れる技。食べ手に見えないように裏側など隠れた場所に入れるので“隠し”包丁と呼ばれる。

 

《飾り包丁》

握りが美しく見えるように、寿司だねの表側に包丁を入れること。赤貝の周りに包丁を入れ、握った時に花が咲いたように見せたり、イカやアジに格子状に包丁を入れて、煮切りを塗ると鹿の子模様が浮かぶようにしたりといった技がある。

 

《おぼろ》

白身魚やエビなどの身をすりつぶし、味つけした後、鍋で炒り煮にしたものの総称。江戸前寿司では芝エビのすり身に玉子の黄身を加え、丁寧に炒り上げた“海老おぼろ”がよく使われる。砂糖を入れた甘い味つけで、酢じめの魚の酸っぱさを緩和したり、淡白な魚に味のアクセントをつけるために用いることが多い。

 

《漬け込み》

素材を煮るのではなく調味液に漬け込むことで味を含ませる技法。

ハマグリやアサリなどに用いる。マグロの赤身を煮切り醤油に漬ける“づけ”もその一種。ハマグリの場合は茹で汁に醤油、砂糖、味醂を入れた調味液に丸1日以上漬けるのが一般的。

 

《煮もの》

ダシに醤油、砂糖、味醂、日本酒などを加えて調味した汁で煮ることで、味をつけた寿司だねのこと。煮アナゴと煮イカがその代表。

煮汁をさらに煮詰めて作る「煮ツメ」を塗って供することが多い。

店によって煮汁の味つけはもちろん、煮る時間も数分から数十分までと大きく異なり、それがそのまま店の個性となっている。

 

《昆布じめ》

ヒラメやスズキといった白身魚や、甘エビや白エビ、ホタルイカなど淡白な味の魚介に昆布の旨み(グルタミン酸など)をプラスするための技。食材を昆布で挟んで数時間から数日寝かせて味を移す。

乾燥した昆布には魚介の水分を吸う作用もあるため、水っぽい味を引き締めるためにも使われる。

 

《定置網漁》

その名の通り、海中の定まった場所に網を設置し、マグロ、カツオ、ブリなど同じ時期に同じ海域を通る習性を持つ“回遊魚”を誘い込んで行う、沿岸漁業の漁法のひとつ。

魚を待ち受けて捕獲するため、漁船で追いかける巻網漁などと比べて魚を傷つけにくく、また過剰に獲りすぎることもないので、環境に優しい漁法として注目されている。

 

《煮ツメ》

アナゴなどにつける甘ダレのこと。基本的にはアナゴの煮汁にアナゴの中骨から取ったダシを加え、砂糖(またはザラメ)と日本酒を入れ、とろ火で煮詰めて作るが、ごく一部にイカの煮汁を加えて煮詰めるという店もある。またハマグリ専用にハマグリの茹で汁で作った煮ツメのことを“ハマツメ”と呼ぶ。

江戸前寿司の老舗には、古い煮ツメに新しい煮ツメを注ぎ足しながら何十年も使い続けている所があり、こうした煮ツメは年代物として珍重される。

 

《酢じめ》

酢の持つ殺菌、臭い消しの効果を利用して、生魚の鮮度の低下を防ぎ、生臭みやクセを抑えるための技法。

いきなり酢につけると魚がふやけ、味がぼやけてしまうので、まず魚の表面に塩を振り、浸透圧で余分な水分を取り除いてから酢に浸す。浸す時間は数分から数十分で、長いほど保存性は増すが、酢の作用でタンバク質が固くなり食感が悪くなってしまうため、バランスが重要となる。

 

《光りもの》

コハダ、アジ、サバ、サヨリなど、皮が銀白色に光って見える魚のこと。背中が青みを帯びて見える“青魚”と混同されることが多いが、江戸前寿司ではキスやカスゴなど青魚の範疇には入らない魚も光りものと呼ぶ。

白身魚などと比べて鮮度が落ちるのが早い魚が多いため、古くから酢じめという技法で鮮度の低下を防いでいた。今もコハダやサバには酢じめを施すのが一般的。

 

《たて塩》

魚の塩締めに使う塩水のこと。江戸前寿司では魚体の小さい魚や身の薄い魚に、均一に塩を浸透させるために用いることが多い。海水魚に対しては海水より高い塩分濃度(5パーセント以上)のたて塩を使うのが一般的。

 

《おまかせ》

注文するメニューをお店の側に任せること。高級な寿司屋のほとんどで採用されているシステムで、席に着いて「おまかせで」と言えば、コース料理のように握りとおつまみが順番に出てくる(握りのみを提供する店もある)。客側がメニューの内容を変えることはできないが、苦手な食材を予め伝えておけば、それを出さないように配慮してくれる。

 

《煮切り》

握りに塗るために調味した醤油。「煮切り醤油」の略語。濃口醤油に日本酒、味醂、かつおだしなどを加え、鍋でひと煮立ちさせて作る。加熱して日本酒や味醂のアルコール分を飛ばすことを「煮切る」ということからこの名がある。江戸前寿司ではこれを小さなハケで握りに塗って出すのが伝統的なスタイル。

 

《シャリ》

すし飯のこと。その語源は仏舎利(お釈迦さまの遺骨)から来ているとも、米を洗う時にシャリシャリと音がするからとも言われ、定説はない。江戸前寿司では炊いた米に米酢、塩、砂糖を混ぜた“合わせ酢”で味をつけるのが一般的。ただしシャリに砂糖を入れるようになったのは戦後のことで、戦前までは米酢ではなく酒粕を原料にした赤酢を使い、塩のみで味つけをしていた。

近年は若手の鮨職人の間でこの赤酢のシャリが再評価され、使う店が増えている。赤酢には米酢にはない独特の旨みがあり、それが魚の味を引き立てると言われている。