連載第12回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

 

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

「日本人はやっぱり朝ご飯にスシを食べるの?」

 

この連載では外国人、特にドイツ人による「お寿司にまつわる様々な誤解」について書いてまいりましたが、今回はその誤解の背景にあるものにスポットを当ててみたいと思います。

ヨーロッパではだいぶ前から寿司ブームですが、ブームがあるわりにはなかなか解けていない「誤解」もまだまだあります。その証拠に、ドイツで人と話していると「日本人はやっぱり朝ご飯にスシを食べるの?」と聞かれたりします。ニッポンといえば寿司、寿司といえばニッポン、そしてニッポン人は寿司が大好きなはず、したがって、朝から寿司を食べているに違いない・・・という思考回路になるようなのでした。

ところでドイツ人は総じてNutella好きです。

Nutellaはチョコレート味のペースト状のもので、これをパンに塗って食べます。元テニス選手の伊達公子さんがドイツ人のレーシングドライバーミヒャエル・クルムさんと結婚していたころ「彼は毎日Nutellaがあれば満足なので、食事は楽です。」と語っていたことからも分かるように、ドイツ人とNutellaは切っても切れない関係なのでした。そんなこんなで、ドイツでは朝から大好きなNutellaを食べる人が多いです。Nutellaは冷蔵庫に入れてもよいですが、冷えているとパン等に塗りにくくなることから、冷やさずに常温のNutellaを好むドイツ人も多いです。

 

Kaltes Essen(冷たい食事)の習慣

Nutellaが好きな人が多いということを見てもわかるように、ドイツでは食事が「冷たい」ことも多く、これをドイツ語でkaltes Essen(カルテス エッセン 和訳「冷たい食事」)といいます。昔からのドイツの習慣で、一日3食のうち、warmes Essen(ヴァルメス エッセン 和訳「あたたかい食事」)は昼に一食だけで、朝と夜に関してはあたためないkaltes Essen(カルテス エッセン)を食べるというものがあります。そして「寿司」に関しても、いわば「あたたかくない食事」なので、ドイツではkaltes Essenの一環だとみなされ、「だったら、朝ご飯にも食べるのかな?」という思考回路になるわけです。

お寿司がときに「前菜」の扱いを受けてしまう理由

ドイツだと「おめでたい日」に食べるものは、ほぼ例外なく「あたたかい食事」です。コース料理の場合、メインディッシュはイコール「あたたかいもの」であることが多いです。ドイツではときにお寿司が「前菜」の扱いを受けてしまうのですが、これはこのあたりにも理由があります。

以前ドイツからのお客さんを日本でお寿司屋さんに連れて行ったら、たくさん食べてくれて、「お寿司好きなんだな、口にあってよかった」などと一同で安心していたら、食べ終わったそのドイツ人が「この後、焼肉に行きましょう!」と言い出し、皆ビックリ仰天するとともに大爆笑ということがありました。

そう、彼にとってお寿司はおいしいものです。でもそれと同時に「メイン」イコール「あたたかいもの」という感覚があるのと、「メイン」イコール「肉」という感覚もあるため、「この後、焼肉に・・・」という展開になってしまったのでした。

お寿司には炭水化物も多く含まれているので、日本だと、お寿司を「軽い食事」だと見なす人はあまりいませんが、そのあたりの感覚もドイツ人の場合は異なります。お寿司をイコール「軽い食べ物」や「軽食」ととらえていることも多いのです。さらにニッポンのお寿司屋さんでいただくお寿司は、大皿で出てくるわけではなく、頼んだものから順次に少しずつ出てくるので・・・きっと量が物足りないのでしょう。少なくとも、前述のドイツ人のお客さんの顔には「この量じゃ足りない。はい、焼肉!」と書いてありました(笑)。

もちろんその後一同で焼肉に行きましたが、同行した日本人がみんな少食だったのは言うまでもありません。

お寿司は、軽食、前菜、朝御飯のイメージ?

そんなこんなで、ドイツを含むヨーロッパでは寿司ブームではあるものの、その地の従来の「食事」にまつわる感覚(その感覚とは「メインはあたたかいはず」、「メインは肉のはず」などという感覚です)も根強いので、しつこいようですが、ドイツでお寿司は「軽食」だとか「おやつ」だとか「前菜」という感覚の人もけっこういるのでした。

 

というわけで、「日本人の朝ご飯はやっぱりお寿司なの?」という誤解には実は食生活に関する習慣の違いも関係しています。でも完全に「正しい」形ではなくても、「日本の文化が海外でブームになる」のはやっぱりうれしいことであります。

 

次回の更新は12月上旬を予定しております。

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/