NEW『早川光 江戸前寿司の世界』57~神無月の第三貫~

《ハマグリ》

噛めば旨みのエキスが溢れる

ハマグリは古くから江戸前寿司の定番のたね。ただし赤貝のように生のままを出すわけではなく、軽く下茹でにしてから、茹で汁を煮詰めたタレに漬け込んだものを握ります。

「うちでは茹で汁に日本酒、醤油、ザラメを加えてさらに煮詰めて、アメのような状態にしてから漬け込みます。茹で汁に溶け出た旨みを凝縮して、もう一度ハマグリに戻すというイメージですね」

火の通しが浅いので、ハマグリの身は柔らかく、驚くほどジューシー。そして、その上からアナゴの煮汁で作った煮ツメをかけるのが伝統的な江戸前の作法。

握りを食べればハマグリのエキスがじゅわっと溢れ、口の中でハマグリとアナゴの2つの異なる旨みが混ざり合うことで、噛むほどに味が膨らんでいくように感じます。