連載第11回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

【ところ変われば呼び名も変わる】海外でのSUSHIの呼び名とは?

 

グローバル化している世の中、食べ物に関しても、地元にいながら外国の食べ物が食べられるというありがたい時代になりました。

その一方で食べ物の名前や呼び方に関しては、必ずしもオリジナルのものがそのまま伝わるわけではなく、「その国にアレンジされた名前や呼び方」が浸透することも珍しくありません。

たとえば、ニッポンでは誰もが知っている「シャウエッセン」。私が日本に来たばかりの頃、初対面の日本人に「ドイツといえば、ビールとシャウエッセンですね!」と声をかけられることが多かったです。この「シャウエッセン」のローマ字はSCHAU ESSENなのですが、日本語に直訳すると「見て!そこに食べ物があるよ!」という意味です。来日したばかりの私はそれが日本では商品名だということを知らなかったので、「ドイツといえばシャウエッセン」の意味がよくわからないでいました。

その後、調べてみると、どうもシャウエッセンとはニッポンで販売されているソーセージの商品名らしい、と分かり、なんだかすっきりしたことを覚えています。

「シャウエッセン」はドイツ語ではありますが、少しばかり和製化されたドイツ語です。繰り返しになりますが、ニッポンでは「シャウエッセン」はイコール「ソーセージ」として有名ですが、ドイツ国内で「シャウエッセン」は売られていないため、ニッポンに来るドイツ人も当然、それが商品名であることを知らないことが多いのです。

 

先日、日本人とドイツ人が多く集まる会合の休み時間に、ある日本人が来日したばかりだというドイツ人に「僕はSCHAU ESSENが好きなんですよ」と声をかけていましたが、相手のキョトンとした表情は、日本に来たばかりの20年前の自分を見ているようでした(笑)。

「僕はSCHAU ESSENが好きなんですよ」は、日本に住んでいる人なら「あの人はソーセージが好きなんだな」とすぐにわかりますが、ドイツ人にとっては「僕は、『見て!そこに食べ物があるよ!』という状態が好きなんです。」というような意味になってしまうのでした。

 

ところで余談ですが、私もシャウエッセンは好きです!

※写真はイメージです。

 

さて、前置きのソーセージの話が少々長くなりましたが、そろそろ本題のスシの話に移りたいと思います。

前にドイツで友達と一緒にミュンヘン市内を散歩していたら、友達が「そこの道を曲がったところにMAKIのお店があるよ」と言いました。ふむMAKI?これは何か新しいジャンルの食べ物かしら?いずれにしても、私が知らないジャンルに違いない・・・なんて思っていたところ、友達が「ここだよ!」と指で指したのは・・・「お寿司」を売っているお店でした。

そう、ドイツに限らずヨーロッパの多くの国々では、お寿司はSUSHIとしても浸透していますが、お寿司のことをMAKIと呼ぶ人多いのでした。このMAKIという呼び方は「巻きずし」から来ているのですが、日本的な感覚からすると、「MAKI」というふうに省略されてしまうのは、ちょっと慣れないですね。

そんなこんなで、ドイツにいると“Ich mag MAKI.”(「私は・僕はマキが好きだ」)と言う人にたびたび遭遇するわけですが、これは決して真紀ちゃんというニッポン人の彼女がいるわけではなく、「巻きずし」そして「お寿司全般」のことを指していることも多いのです。

もちろん、ヨーロッパが「寿司ブーム」なのは喜ばしいことなのだけれど、現地で長期生活をしている真紀さんや真希さん、麻紀さんたちにはちょっぴり同情します。きっと、「私はMAKIです」と自己紹介した日には、早とちりな人々(それはドイツ人)から「素敵なお名前だね。その名前はやっぱり寿司から来ているの?」と勘違いされてしまいそうですので・・・。

国や言語によって、「こういう言い方のほうが呼びやすい」というのがあるのでしょうね。たしかに「シャウエッセン」というカタカナは日本人の耳には遊び心があって心地よい響きだと思いますし、MAKIもドイツ人にとって「覚えやすい」し「分かりやすい」のでした。

 

さて、多少オリジナルの意味とは違っていても、食べ物に食べ物のネーミングをつける(「食べ物の現物」×「食べ物のネーミング」)場合はいいのですけどあの有名なニッポンの歌「上を向いて歩こう」が欧米ではSUKIYAKIというタイトルになってしまうのは、半世紀以上経った今もビックリでございます。

最後にスシに話を戻すと。ワタクシは欧米人にMAKIを食べた!といわれるたびに、「あ、お寿司を食べたんですね!」とあえて言い換えて返事をすることで、啓蒙活動というか、ささやかな抵抗をしているのでした。

 

それでは皆様、また!

 

 

次回の更新は11月中旬を予定しております。

 

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サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/