連載第6回 サンドラ・ヘフェリンの醤油二度づけ禁止令~外国人をお寿司屋さんにつれて行こう~

外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?

来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが “お寿司” にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!

 

 

アナログなお寿司 VS ハイテクなお寿司

 

最近すっかりハイテクなお寿司が増えました。何がハイテクかって、回転寿司のことです。

少し前までは、どこの回転寿司に行っても、目の前でぐるぐる回っているお寿司を眺めながら「どれにしようかな~」なんて悩みながら注文するのが楽しみでした。

時には、迷っているうちに、目の前のお寿司が自分の前を通り過ぎてしまい、既に次の一周をし始めようとしているその遠ざかりつつあるお寿司を眺めながら「あ、、、いっちゃった」「ああー、とっておけばよかった!」なんて自身の優柔不断さや卑しさと闘ったりと、それはなかなかに奥深い時間でもありました。「いま板前さんが自分の好きなネタを握っているから、板前さんがそのネタをレーンに載せた瞬間に、その新鮮なお寿司を取ろう!」と身構えたり、何かと色んなネタが回るレーンや板前さんの動きを気にしながらワクワクしていたものです。

 

ところが今はどうでしょう。下調べをしないで、回転寿司に入ると、そこが「ハイテク回転寿司」だった、ということも増えました。そのようなハイテク回転寿司では、ぐるぐると何周も回っているネタは皆無であり、客がタブレット上で注文したお寿司のみが「ピンポイント」で客の目の前にびゅーんと届く、というそれはそれは便利なシステムです。

 

食べ終わってからも、空の皿をレーンに載せ、目の前のボタンを押せば、空の皿はまた厨房に戻っていくので、店員さんと会話をする必要もなく、とても合理的。

このようにハイテク化されたシステムのもとでは、回っているお寿司たちを誰も取らず、ネタがかぴかぴに乾いたり無駄になる心配もありません。客が「イクラくださーい!」と大声で叫ぶ必要もありません。「板前さんといつ目が合うかな、目が合ったら、このネタを頼もう」と「タイミング」を気にする必要だってなくなりました。

でも私はやっぱり寂しいのです。何が寂しいって、ハイテクの回転寿司は、入った瞬間に無機質というか殺風景というか、なんだかガランとしているんですもの。

 

タブレットで「画面越しに見るスシ」はなんだかんだいって、「実際に見ることのできるスシ」とは違うわけです。これは「実際に出てくるお寿司と、写真のものが違う!」といわばクレーム客になろうとしているのではなく、「やっぱり目の前で回っているスシを見ながら、何を食べたいか決めたい」ということなのでした。私の場合はね。

 

それにネタが回っている回転寿司屋さんというのは、魚屋さんに通ずる「活気」があります。板前さんの掛け声や客の「(●●というネタ)くださーい」という叫び声が飛び交い、これこそ「ニッポン」ではありませんか。

ところがどうしたことでしょう。

最近、ドイツから10代や20代の若い人が日本に遊びに来ると、「ハイテクのお寿司屋さん(つまりは回っていない回転寿司のこと)に行きたい!」とみんな口をそろえて言います。私の偏見かもしれませんが、特に理系の人は「モニターで注文して、ピンポイントでお寿司がくる」というこのシステムが好きなよう。

子供を連れたお母さんも、ハイテクな回転寿司について「子供がボタンを押すのが楽しいって言うのよ」と語ります。もっともまだ小さい子供の場合「お寿司の現物が実際に目の前で回っていると、子供が触らないかとハラハラするから、回っていないお寿司屋さんのほうがいいいのよ」という事情もあるようです。

 

外国人のなかでも若い世代や「デジタル人間」は、ニッポンのこの回らないハイテク回転寿司が大好き。ファンが非常に多いのでした。

そもそもは、「目の前で現物の例えばウニのお寿司が回っているのに、板前さんに『ウニください!』と注文する客が増えたことが、5年ほど前にデジタル(ハイテク)回転寿司が登場した一因だとか。こう考えてみると、ハイテク回転寿司は「食べ物を大切にするシステム」でもあるのですね。

それにしても回転寿司を観察していると、お寿司にも「時代」というものがあるのだと考えさせられます。同時に自分がどこまでもアナログ人間であることにも改めて気づかされるのでした。そう、半分は外国の血が流れているのにもかかわらず、私の趣味趣向はどこまでも「昭和の人間」なのでした。(筆者は昭和50年生まれです。)

 

皆様はいかがですか?

 

次回の更新は9月上旬を予定しております。

 

 

 

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第1回

第2回

第3回

第4回

第5回

 

サンドラ・ヘフェリン 

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/