『早川光 江戸前寿司の世界』36~水無月のマグロ~

~マグロ~

“はがし”の大トロはふわふわの舌触り

『鮨久いち』の親方、出口威知郎さんが選んだのは宮城県塩竈産、120キロのホンマグロ。6月のマグロとしてはしっかり脂がのっています。

出口さんはこのマグロを“はがし”にして握ります。はがしとはマグロの身から白い筋の部分だけを丁寧に剥がし、食べやすくしたもののこと。普通は筋が強く歯に当たりやすいカマ下や背の身を剥がすことが多いのですが、出口さんは“蛇腹”と呼ばれる大トロの部分をはがしにします。

「最高クラスのマグロですし、1週間熟成させているので、そのまま握っても筋が歯に当たるなんてことはないんですが、それでも丁寧に筋を剥がすと舌に乗せた時の感覚が全然違うんですよ」

筋を取り払った“はがし”の身は羽二重のようにふわふわ。食べれば上質な脂が舌の上で淡雪のように融けるので、思わず驚きの声を上げてしまいます。