外国人が“お寿司”を食べる際に生じるハプニングとは…?
来日20年、ドイツと日本のハーフであるコラムニスト、サンドラ・ヘフェリンが“お寿司”にまつわる「あんなことやこんなこと」について、語ります!
「蓋をあけてビックリ!」のお寿司デート
かつて、ちょっといいな、と思っているドイツ人男性にお寿司に誘われました。「僕のおごりだよー。お寿司を食べにこうよ!」と。こちらのテンションはあがりまくりです。どんなお店に連れて行ってくれるのかしら、もしかしたら銀座かしら、板前さんと会話はちゃんとできるかしら、デートだけれどその日は香水はつけていくのやめよう・・・(第2回参照)と高級そうなカウンターで好きな人と並び大好きなウニとイクラを頬張る自分をイメージトレーニングしながら胸をときめかせること数日。
さて当日。予定していた通り香水はつけずに、「あまりカジュアルになり過ぎないように・・・でもこれだとお寿司屋さんではやっぱり派手かしら?」などとブツブツ言いながら服を選び、それはそれはうきうきしながら、そのドイツ人彼との待ち合わせ場所に向かったのでした。
待ち合わせ場所は二人にとって近い新宿駅の構内。あれ?もし銀座に行くのだとしたら、どうやっていくのかしら?丸ノ内線かしら?それともタクシーかしら?
正解は山手線。彼に言われるがまま原宿で降り、表参道方面へ二人で歩く。うん、表参道にも高級なお寿司屋さんありそうだもんね!なんて想像しながら歩いていたら、着いたのは・・・なんと回転寿司でした。
あまりの驚きというか予想外の展開に一瞬息が止まりそうになりましたが、ドイツ人の彼は満面の笑顔でこう言うのでした。
「ここ、僕の行きつけのお寿司屋さんなんだ!」
う~ん、行きつけのお寿司屋さんかあ。まさか『回るお寿司屋さん』だったとは!
でもよく考えたら私がバカでした。今考えると(そう、このエピソードは私が20代だった頃の話なのです)、ドイツ人を含む欧米人には「お寿司イコール回転寿司」だと思っている人の比率が昔も今も高いのでした。
「回りながら」出てくるお寿司が映像の上で「絵」になるからか、ドイツを含むヨーロッパのテレビではよく「回転寿司」が紹介されていたものです。今でこそ海外にも回転寿司店はありますが、昔は「食べ物が『回って』出てくる」という発想自体が新鮮で、私のドイツの女友達なんて「空港のトランクみたい!」と大はしゃぎしていました。こうして回転寿司の虜になった欧米人は、「お寿司」というと「あ、回転するやつでしょ!」と(一部ですが)とらえるように。
さて、ウンチクもここまでにして、先ほどのデートのお話。少々拍子抜けしながらも、彼と二人で彼が常連だというこの回転寿司に入ってみると・・・これが・・・おいしいのです。
高級なお寿司屋さんには無い面白いネタがたくさんあり、回っているお寿司を眺めるのも、実際に食べるのも楽しい。
どんなメニューが回っているのかといいますと、たとえばこんな「うずら納豆」。これが絶妙なのです。
あとは、ウニとうずらを組み合わせたものも。
「ちょっと拍子抜けなお寿司デート」がきっかけで、私もその後、この回転寿司に興味を持つように。実はあれから10何年経った今でも近くで用事があるたびごと、この「うずら納豆」のある回転寿司に行っています。
デートのドイツ人男性?彼はとっくに一人でドイツに帰り今はどうしているのかは知りません。
ヨーロッパの男性にお寿司に誘われたら・・・回転寿司だと心得るべし!というお話でした。
次回は7月中旬ごろを予定しております。
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、日本とドイツを比べながら「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ」(ヒラマツオとの共著/メディアファクトリー)、「爆笑! クールジャパン」(片桐了との共著/アスコム)、「満員電車は観光地!?」「男の価値は年収より「お尻」!?ドイツ人のびっくり恋愛事情」(流水りんことの共著/KKベストセラーズ)など計12冊。ホームページは 「ハーフを考えよう!」 http://half-sandra.com/