『早川光 江戸前寿司の世界』⑲~卯月 第一貫~

~カツオ~

初物の爽やかな酸味を楽しむ

カツオの旬については人によって意見が分かれるところ。刺身で食べる場合は脂がのった秋の方が旨いとされていますが、江戸前寿司の世界では春の初ガツオが珍重されます。

「初ガツオの魅力は赤身のコクと酸味、そして爽やかな香り。これは秋のカツオにはないものです。うちではそれを生かすために、ガスではなく藁の火で炙ります。手間はかかりますが、細かく包丁を入れてから皮側だけを焼くことで、皮はパリパリに仕上がりますし、赤身の味わいも引き立ちます」

湯島『鮨 真菜』の親方・金井淳さんはまた、ワサビでもショウガでもなく“和ガラシ”をシャリとの間に入れてカツオを握ります。

「これは京都で作っている瓶詰の和ガラシですが、カツオとすごく合うんです。食べた方はみなさん驚かれます」

ワサビのツンとした辛さではなく、じんわりと辛さが伝わる和ガラシは、初ガツオの酸味やコクを邪魔することなく存分に味わわせてくれます。そして燻した藁の香りとも相性抜群です。