『早川光 江戸前寿司の世界』⑱~弥生のマグロ~

~マグロ~

 

辛口のシャリで脂の甘みを引き出す

「マグロの漁法とか熟成についてはこだわりません」。東日本橋『鮨一條』の親方、一條聡さんはきっぱりとそう言います。

「熟成で色変わりしてしまったマグロには魅力を感じないんです。見た目も味のうちだと思ってますから」

そんな一條さんが選んだのは静岡県下田産、71キロのホンマグロ。魚体はやや小ぶりですが、しっかりと脂がのっています。

「基準はうちのシャリに合うかどうか。身が柔らかくて、肌理が細かいのを選びます。あとは皮の厚み。大きさが同じなら、皮が薄いマグロの方が味はいいです」

握るのは白い脂肪の筋が入った“蛇腹”と呼ばれる大トロ。その脂の甘みを、赤酢と塩のみで砂糖を使わない辛口のシャリが余すところなく引き出します。